「学術野営2019 in 能登半島」プログラム公開のお知らせ

学術野営2019@能登半島(2019年7月6日開催)の、報告タイトルと内容が決定いたしました。
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趣旨説明:堀井洋(合同会社AMANE) 後藤真(国立歴史民俗博物館)

セッション1【学術資料の存在・喪失に関する現状の正確な把握・公開】

「能登半島における民具の収集・保存の状況とその記録情報について」 川邊咲子(金沢大学・国立歴史民俗博物館)

生活の中で日常的に使用されてきた民具は、日本の各地において数多く収集・保存され蓄積されている。しかし、その多くは学術資料や文化資源として活用されず資料館の倉庫や廃校舎に死蔵されている現状にあり、それらを地域で保存する意義自体が問われ始めている。当発表では、そうした民具が持つ問題の背景を明らかにするため、能登半島で収集・保存されている民具とその情報の蓄積・共有の現状について報告するとともに、モノとその情報の蓄積・共有の在り方について考える。

 

「歴史資料の保存・継承・活用 〜能登地域を事例として〜」 堀井美里(合同会社AMANE)

本報告では、主に古文書を中心とした歴史資料が、能登地域においてこれまでどのように整理・保存されてきたのか、そしてその過程で作られた資料情報がどのような形で共有・継承されてきたのかについて要点をまとめる。その上で、どの地域にも共通する課題、もしくは能登地域固有の問題について整理し、問題解決のための方法について議論したい。また、今後、こうした地域の資料の存在を周知し、継承へつなげるための新しい活用についても考え、提案したい。

 

セッション2【正確な現状把握に基づいた継承・研究利用の検討】

「地域の資料を保存・継承することの課題を考える」 天野真志(国立歴史民俗博物館)

自然災害などの地域変動をきっかけとして、地域資料滅失の危機が顕在化するなか、それらを保存し後世に伝える取り組みが各地で広がっているが、多様な地域社会においては「資料が失われる」危機の認識も一様ではない。そのため、地域社会の多様性を認識・継承しつつ、それらに対応しうる資料保存・継承の考え方や救済体制を考えることが求められる。本発表では、各地の諸活動を踏まえながら現状の課題を通して今後の展望を検討したい。

 

「学術資料の保存・継承:リポジトリができること」 林正治(国立情報学研究所)

本発表では、学術資料の保存・継承において、機関およびデータリポジトリができること、それにより、どういった世界が提供できるのか、他分野の事例を交えながら議論する。学術資料はただ保存すればよいものではなく、保存した学術資料を用いて、何がしたい、何をするべきなのか、あるべき姿を明確にし、共通認識とすることが重要である。本発表は、そのきっかけとなる話題提供の場としたい。

 

セッション3【学術資料の継承と一体となった利活用と発信】

「生態系評価による地域再生と持続発展」 中村浩二(石川県立自然史資料館)

いま能登はじめ日本各地で、地域衰退とそれにともなう、自然環境の劣化、伝統文化の消失が進みつつある。「生態系評価」は、この状況を分析する取組のひとつであり、事態を「過去→現在→未来」時間軸で分析する。多様な関係者が参加し、原因分析、対応評価、シナリオ分析などをおこなう。演者が関わってきた「日本の里山里海評価」、「イフガオ棚田評価」などを紹介し、有効性と限界、今後の方向を論ずる。

 

「Information Logisticsを基底に学術資料や文化資源を見つめ続ける」 阿児雄之(東京国立博物館)

学術資料や文化資源に関わる情報は、物質的な存在を肯定し、利活用の要となりつつある。その為、資料を保有する者は、デジタルコンテンツの作成や積極的な発信に力を注ぎ、それら情報化業務は人的・金銭的負担を大きくする一方である。負担のみを単調増加させている原因のひとつとして、情報の流通・運用モデルの欠如があると考える。資料や保有者の特性に応じた合理的な運用形態を描くことなしに、情報化業務に取り掛かってしまっていることも少なくない。本発表では、情報流通の運用管理という視点で、学術資料の利活用と発信を中心に、情報化業務について検討を試みる。

 

「学術資料を活かすデザイン思考」 原嶋亮輔(Root Design)

地域に保存される学術資料や、古道具店に積まれた古民具に触発されて起こしたデザインプロジェクトを紹介。学術資料の何が人々の興味の対象となり、心を惹きつけるものづくりになり得るのかを考察し、過去から未来へ繋がる生きた学術資料の在り方を提案。資料の保存・継承に対して“触感”をともなったデザイン・アプローチで得ることのできた実感を交え、その可能性に対する意見交換を行いたい。

 

「大学アーカイブズにおける学術資源の利活用~東北大学を事例に~」 加藤諭(東北大学史料館)

東北大学では法人化以降、アウトリーチ部門を学術資源研究公開センターとして位置づけ、そのもとで博物館、植物園、史料館が活動する体制を取ってきました。また史料館は事務所掌において附属図書館と繋がっていることから、公文書管理だけでなく、大学における学術資源のあり方と密接に関わってきました。本発表では、大学アーカイブズの視点を通じて、東北大学における学術資源研究公開の現状について紹介します。

 

「民俗文化の記録が紡ぐ島と人と時間・序」 高橋そよ(琉球大学)

琉球弧の島々では、多様な生態系の恵みを活かし、集落ごとに多様な文化が育まれてきました。しかしいま、高齢化や後継者不足などから地域文化の継承は危機に直面しています。
地域に根ざすランド・グラント・ユニバーシティを建学理念とする琉球大学の民俗学講座として、琉球弧の文化多様性の記録と継承への貢献は重要課題です。本発表では、奄美・沖縄の地域博物館を対象に行った資料保全調査から課題を整理し、研究者やNPO、福祉団体などの多彩なチーム編成による民俗文化の記録と活用事例を紹介します。

 

ディスカッション: 

コーディネーター 高田良宏(金沢大学)