JOSS 2019 -地域に現存する文化財の継承とオープンな情報資源化に向けた取り組み

JAPAN OPEN SCIENCE SUMMIT 2019 では、セッション「地域に現存する文化財の継承とオープンな情報資源化に向けた取り組み」を開催します。本セッションは、合同会社AMANE・国立歴史民俗博物館「総合資料学の創成」事業との共催で実施します。

趣旨:日本国内には、多種多様な歴史資料・文化財が現存し、それらは重要な学術研究資源としてのみではなく、社会的な振興・発展に資する文化資源しても注目されている。しかしながら、地域の少子高齢化・過疎化が進み、かつ社会に対する積極的な情報公開が求められる近年においては、それら文化財の保存・整理・継承についても、デジタルアーカイブと一体となった新しい概念および手法の確立が必要である。本セッションでは、オープンサイエンスに貢献する文化財の継承・情報資源化について、現状と課題の共有と今後の展望について議論を深めたい。

日時:2019年5月27日(月)10:15~11:45
場所:一橋講堂 特別会議室(1F)(東京都千代田区一ツ橋2-1-2)
参加登録:公式サイトからの事前申し込みが必要です。参加無料。

プログラム:

1.趣旨説明: 堀井 洋(合同会社AMANE)

2.発表:

「地域の歴史・文化資料のデータ化の課題とオープンサイエンス」 後藤 真(国立歴史民俗博物館)

地域の歴史資料情報を、データとして活用する例はここ数年で新たに増加してきている。鑑賞・文理を問わない研究から資料そのものの保全にまでその目的は様々である。しかし、資料のデータをオープンサイエンスの文脈で扱うためには、いくつかの課題がある。本発表では、それらの課題を、人間文化研究機構および国立歴史民俗博物館の進める事業などを前提に、特に資料とデータの両者の保全と公開・検証という文脈から整理してみたい。

「研究データの早期のオープン化に資する「逐次公開」型運用モデルと運用支援環境の検討」 高田 良宏(金沢大学)

研究データの公開推進は焦眉の課題である.現状では大規模研究プロジェクトで生成されるビッグデータなど一部に限られる.一方,ビックデータ等に比べ圧倒的に件数が多い研究室などに蓄積されている多種多様な研究データの公開は進んでいない.我々は研究データの早期の公開に資する「逐次公開」型運用モデルを提案し,その運用を支援する環境を構築した.この取り組みは地域資料の公開・活用を進める上でも適応可能と考えている.

「オープンサイエンスと地域文書館」 松岡 弘之(尼崎市立地域研究史料館)

地域のさまざまな文字資料や歴史的公文書などを収集・保存・活用する「場」である文書館(機能)において、オープンサイエンスの取り組みを進めようとする際、資料のデジタル化という媒体転換だけに止まらないさまざまな課題が横たわる。山内報告とは異なる都市部における地域社会の課題なども交えつつ、平常時あるいは災害時における文書館の機能や役割を紹介しながら、今後の取り組みにむけた展望をフロアと共有したい。

「誰のために地域社会の資料はまもられるのか?」 山内 利秋(九州保健福祉大学)

人口減少・超高齢化やコミュニティの限界化が都市部より早く進行している地方社会において「誰のために資料をまもり、活用しようとするのか」という問いを自問する事が多い。眼前にある社会の様々な課題に対して、専門家は資料が持つ価値や情報をそこへフィードバックしていくべきと考える。しかし、地方では専門家はおろか地域社会を担うべき若年層の減少が著しい。エデュケーターやコミュニケーターと呼ばれる、地域ニーズと資料の価値をマッチング出来る人材育成が各地で不可欠であろう。

 

3.質疑応答・全体討論