「学術野営2020 in 奥州市」要旨のお知らせ


学術野営2020@奥州市(2020年7月11日開催)の、各セッション・各座の話題提供者、要旨が決定いたしました。

趣旨説明:堀井洋(合同会社AMANE) 後藤真(国立歴史民俗博物館)

「奥州市所在の史資料に関する現状と課題」
司会:高橋和孝氏(奥州市教育委員会)

岩手県奥州市には、公有・民有を問わず、中世から現代までの数多くの史資料が残されている。しかしながら、昨今の社会情勢の変化により、民有の史資料の散逸が急激に進行しており、それらの保護が喫緊の課題となっている。また、公有の史資料についても、目録の整備が行き届いているのはごく一部であることが最近の調査で判明し、これらの追加調査も課題として浮上してきている。本報告では、これらの課題に対する奥州市教育委員会の取り組みを紹介しつつ、今後の方策を検討したい。

 

「新型コロナウイルス流行後の社会における資料保存・活用について」
司会:川邊咲子(国立歴史民俗博物館)

私たちの社会は今、新型コロナウイルスの影響により、経済、教育の在り方から生活様式まで、新しいスタイルへの柔軟で早急な移行が求められている。そうした状況において、歴史・文化資料を取り巻く状況もこれまで通りとはいかなくなっている。今を乗り越えれば元に戻れるとは限らず、ウイルスとの共存の必要性から、部分的にせよ全く新しいスタイルをつくり出し定着させていかなければならない可能性が高い。もしウイルス流行が完全に終息し社会が元通りになったとしても、今後同じようなことが繰り返されない保証はない。こうした状況にある今、そしてこれからを、私たちはどのように見通し、いかなる資料の保存・活用の新しいスタイルを見出していけるだろうか。本セッションでは、現時点で言えること、考えていることを共有し合い、今後の進むべき道筋を模索したい。
<本セッションの流れ>
・導入
新型コロナウイルスで歴史・文化資料を取り巻く状況はどう変わった?
・本題
歴史・文化資料を取り巻く現状 → 今これから求められる資料保存・活用の在り方とは?
1.資料調査・収集
2.資料保全・現地保存
3.資料活用・情報発信
※活発で自由な意見交換の場となるよう、参加者には他者の意見を尊重しつつ積極的に発
言する姿勢を求めます。(コメント欄やTwitterからの発言も可)

 

●壱ノ座
「災害を超えて資料を「喪失」より救う-大規模自然災害と地域資料の保全・活用-」
座主:川内淳史(東北大学災害科学国際研究所)

【話題提供者】
・小野塚航一(神戸大学大学研究員/史料ネット事務局)
・松岡弘之(岡山大学/岡山史料ネット)
・白水智(中央学院大学/地域史料保全有志の会)

【要旨】
周知の様に、大規模自然災害の頻発する日本社会においては、地域資料は常に喪失のリスクにさらされている。大規模自然災害時における地域資料の救出保全活動は、阪神・淡路大震災以来全国的かつ組織的な展開を見せ、現在、全国に20以上組織された「資料ネット」をはじめとし、地域の歴史資料や文化財に関わる多くの人びとの連携によって進められている。一方、大量にレスキューされた資料について、災害後の社会においてどのように活用し、またつないでいくかについては、各地で試行錯誤が行われている。また、災害から救われた地域資料の活用と同時に、災害で産み出された資料(災害資料)をどのように保存し、活用していくかについても検討されねばならない。
本セッションでは、災害時の資料救出・保全活動を踏まえて、救出資料の保全活用や災害資料の保存について、各地で実際にとりくまれている方々より事例をご紹介いただき、災害を超えて地域資料を後世へ遺し、つないでいく方法について議論したい。

 

●弐ノ座
「縮退化するコミュニティ、失われゆく資料」
座主:山内利秋(九州保健福祉大学)

【話題提供者】
・大本敬久(愛媛県歴史文化博物館 専門学芸員)
「地域の危機・文化の再構築-愛媛県の事例-」
地域の民俗行事や文化活動について、過疎、少子高齢化及び西日本豪雨による変容の現況と課題を紹介する。
・佐藤宏之(鹿児島大学)
「島嶼地域からみる歴史資料の過去・現在・未来」
鹿児島県の県域は南北600㎞。そこには26の有人離島が広がる。島は海に囲まれ、独自の自然、文化、社会経済システムが存在する一方で、さまざまな環境変動の影響を強く、しかも迅速に受ける地域でもある。本報告では、島嶼地域から歴史資料保全の、さまざまな環境変動に対する適応策を過去から未来に向けて考えてみたい。

【要旨】
人口減少や超高齢化という日本社会の縮退化から逃れる事は、現状のままではもはや困難であろう。また、こうした社会において、我々は様々な資料が失われている状況をも目の当たりにもしてきた。だが我々は一方で、この<社会と資料が衰退・散逸している現象>の一端のみを捉えて、単に資料をまもる事自体を目的化してしまってはいないだろうか。そうした疑問から、ここでは、今一度地域コミュニティと資料との関係性について議論してみたい。

 

●参ノ座
「ミュージアム起点のものづくりー好奇心と学びをデザインするー」
座主:原嶋亮輔(Root Design Office)

【話題提供者】
・大澤夏美(札幌市・ミュージアムグッズ愛好家)
・内村彰(株式会社 フェリシモ)

【要旨】
ミュージアムに集う「学術資料」。その価値を何としてどのよう活用されるべきなのか。人を引きつけ、学びを与えてくれる情報資源を、アートと学術それぞれの視点から見るときの「好奇心」や「学びの質」に感じる差異は、掛け合わせることで新たな魅力を生み出す可能性を秘めていると感じています。社会環境が急変する時代に、ミュージアムを起点にした文化を再起動するために、私たちができるものづくりの在り方を議論したいと思います。

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参加は無料です。
オンラインに必要な機材・環境は各自でご準備いただき、参加申込みの上議論にご参加ください。

申込みは、下記のフォームからお願いいたします。
FBのアカウントがある方は、下記フォームに加え、イベントページで「参加予定」にしていただけるとありがたく存じます。

https://forms.gle/St6n9F9QrURhAxxo8

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